みちのく銀行「アプリ開発が成功した理由」、
後発組としての秘策とは?
※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2021年7月15日)
みちのく銀行

株式会社みちのく銀行

営業企画部 副長 坂上 幹様
営業企画部 代理 棟方 洸介様

株式会社みちのく銀行(以下、みちのく銀行)様は、青森県を中心に国内94店舗を展開する地方銀行(2021年3月31日現在)。「地域の一員として存在感のある金融サービス業を目指し、お客さまと地域社会の幸福と発展のためにつくします」を企業理念に掲げ、「家庭の銀行 みちのく銀行」を企業スローガンとして標榜されております。また、地元のお客様に愛され、末永く利用してもらえるモバイルアプリの実現を目標とされています。今回、お客様にとって便利な機能や毎日使ってもらえるように親しみやすいギミックを取り入れたデジタルアプリの開発をご支援させていただきました。

あらゆる金融機関で進むDXだが、その取り組みの状況にはバラつきがある。特に、デジタル戦略で他行に遅れをとっていた地銀・みちのく銀行は2019年、巻き返しを図るためにスマホアプリ開発に着手した。これが、ローンチ後、たった2カ月で1万4000ダウンロードを獲得するなど、高い評価を得ることに成功している。なぜ、後発となったみちのく銀行のアプリ開発は成功したのか。その秘密に迫る。

デジタル化で出遅れていたみちのく銀行は、どのように他行と差別化を図り、アプリ開発に着手したのか?
(Photo/Getty Images)

地銀のみちのく銀行がアプリ開発に着手したワケ

みちのく銀行 営業企画部
副長 坂上幹氏

「家庭の銀行」を標榜する青森県のみちのく銀行は、地域に根差した地方銀行として、県民の公募で決定した“ひらがな表記の行名”を初めて採用した銀行だ。比較的固いイメージのある金融業界において、先陣を切ってアニメのキャラクターを採用し、親しみやすさを打ち出した銀行でもある。

金融業界のデジタル化やDX化の推進は、他業界と同様に今後の生き残りをかけた企業成長のために必要不可欠な戦略と言える。とはいえ、一般的な金融業界では、過去の勘定系システムがレガシーとなり抜本的なシステムの刷新が難しかったり、顧客情報の保護の観点から強固なセキュリティが求められたり、利用頻度が限られるサービスの費用対効果が課題となったりと、業界特有のハードルがあるのも事実だ。

そのような状況で、みちのく銀行は、他行と比べてデジタル化が出遅れていた状況があり、危機感を募らせていたという。また、店舗の統廃合も進め全社をスリム化していたことから、どうしても顧客接点の減少が課題となっていた。そのため、顧客接点を担保しながら利便性を確保したいと考えていた。さらに若い世代の新規顧客も取り込み、将来の収益基盤を育てたいという前向きな攻めの姿勢もあった。

そこで2019年12月ごろから、新しいモバイルアプリの提供を含むデジタル戦略をスタートさせたという。みちのく銀行のデジタル戦略を担当するみちのく銀行 営業企画部 副長の坂上幹氏は、「当時、マネーフォワードと連携したサービスを提供していましたが、こういった家計簿の機能を独自アプリに取り込みつつ、入出金明細・口座残高の確認や、住所変更なども行えるようにして、利便性を高めたフロントサービスにしようと考えました」と語る。

同行は、独自のアプリを提供するにあたり、単なる金融機能だけでなく、ユーザーに毎日利用してもらえるように非金融機能を融合し、地域情報や健康情報、事業体との連携などのコラボレーションも目指しているという。もちろん、こういったアプリは、同行だけで実現できるものではない。いかにアプリ開発を進めたのだろうか。

アプリ開発のパートナーとして、エムティーアイを選んだ理由とは

みちのく銀行のアプリ開発を担ったのが、モバイルビジネスに精通し、アプリを自社で開発しているエムティーアイであった。もともとエムティーアイは、スマートフォンからのアクセスに対し、PC用Webサイトをスマートフォン向けに最適化されたページに変換して表示できる「モバイルコンバート」というサービスを提供していた。

エムティーアイのモバイルコンバートを使うと、システム側の開発や調整が不要になる。プログラム層やDB・基幹システム層に触れず、プレゼンテーション層のHTMLデータを変換するため、余計な開発コストや運用リスクを低減できる
みちのく銀行 営業企画部
代理 棟方洸介氏

このサービスを使うと、既存システムとは独立して、複雑なアプリ処理を行うWebサイトを自在に変換し、各種スマートフォンにマルチ対応するため、システムの改修やWebのタグ挿入などを行わなくて済み、迅速な開発が行えるメリットがあった。

みちのく銀行は、すでに2019年にインターネットバンキング投資信託の取引をエムティーアイのモバイルコンバートで対応してもらっていた。そこでアプリ開発に着手するにあたり、複数ベンダーの中から、エムティーアイに依頼することを決定したという。

みちのく銀行 営業企画部 代理の棟方洸介氏は、「我々は、地方銀行でも特にデジタル化が遅れていました。そのため後発で専用アプリを作るならば、できるだけ面白くて良いものにしたいと考えていました。しかし予算も限られており、大手ベンダーさんに依頼しても、オーダーメイドで自由度があるアプリは作れそうにありません。そこで、なるべくコストをかけずに、オリジナルのコンテンツを親身になって開発してくれるエムティーアイさんに最終的にお願いすることにしたのです」と、ベンダー選定の経緯を説明する。

もちろん銀行アプリである以上、セキュリティも検討材料になったが、エムティーアイは金融機関が情報システムを構築する際の「FISC」が定める安全対策基準に準拠したシステム運用体制を備えていた。モバイルコンバートの変換に実績があり、セキュリティを重視する金融機関など200以上の大手企業にも採用されていたので安心だった。

しかし、それだけに留まらず、スマートフォン向けサービスとして、女性の健康をサポートするフェムテックの老舗で有名な「ルナルナ」や、音楽・映画・漫画などの総合エンタメコンテンツを提供する「music.jp」といったブランドを自社で運営していた。そのため、コンテンツビジネスを成功に導く独自のノウハウを蓄積していた点も大きかった。

みちのく銀行アプリに仕込んだ便利機能と親しみやすいギミック

専用アプリの画面。実行できる機能は、住所変更、通帳レス口座、インターネットバンキング、キャッシュカード再発行などで、各種の手続きがWeb上で可能になる

2020年に入って、みちのく銀行はWebサービスを拡充しながら、専用の「みちぎんアプリ」を同時進行で開発していった。同年2月にエムティーアイにアプリ開発を依頼してからは、事はスムーズに進んだ。3月に要件定義、4月にはデザインと開発を平行して進めていった。

家計簿機能「かんたん家計簿」の画面例。各種口座の連携により、毎月の収支を簡単にチェックできる。収支を見える化することで、節約対策にも貢献する

「みちぎんアプリは、残高照会機能に加え、ユーザーの窓口的なフロントとしての意味合いを持たせており、諸届の手続きをWebを通じて行う形です。これにより、住所変更、通帳レス口座、インターネットバンキング、キャッシュカード再発行など、各種の手続きが可能になりました。また、マネーフォワードと連携した既存の家計簿サービス機能も、アプリ側に統合しました」(坂上氏)

このほか、ユーザーに毎日使ってもらえるようなユニークな機能も取り入れ、他行との差別化を図ったという。たとえば、アプリ画面の背景をユーザー好みに合わせ、写真やイラスト(アニメキャラ)を変更できる「着せ替え機能」を実装したのだ。

ユーザーの好みに合わせて、モバイルアプリの背景を、写真やイラストなどに着せ替えられるユニークな機能を採用した点も大きな特徴だという

「ユーザーがシンプルな背景にしたい場合には写真を選び、また遊び心のある画面を選びたい場合はアニメキャラをチョイスできるようにして、アプリを起動するたびに写真やキャラクターのメッセージが変わる仕組みにしました。どうしても写真だけだと銀行の固いイメージになりがちですが、アニメキャラクターなら若いユーザー層に親しみを持っていただけると思ったからです」(棟方氏)

ここで、ユーザーの目的に合わせてスマートデバイスに対し、最適なUI/UXを設計できるエムティーアイのデザイン力が如何なく発揮されたという。

棟方氏は「青森県は津軽地方と南部地方に分かれているのですが、地域性や方言などに大きな違いがあります。エムティーアイさんは打ち合わせの際に、そういった文化面もくみ取ってくれて、両地域に合ったデザインを提案してくれました。使いやすさでも、キャラクター画面にメニューボタンを置かず、下からスワイプする形で残高明細を引き出せるように、UI/UXにしていただきました」と評価する。

このようにエムティーアイは、みちのく銀行の要望に応えながら開発を進め、検証テストを終えて2021年2月にサービスインを果たした。当初の計画よりも3カ月ほど予定がズレ込んだが、これはアプリ審査の承認待ち期間が長引いたことが原因だった。これを差し引いても、フルスクラッチのスマートフォン用サイトの開発と比べれば、時間もコストも大幅に減り、素早い運用を実現できたという印象であった。

みちのく銀行のアプリケーション開発スケジュール。当初の予定より3ヵ月ほどずれ込んだが、アプリの承認期間が長引いたためだ

完成したアプリの評判・成果とは?

みちのく銀行は、今回のアプリ開発に対し、エムティーアイのサポート面についても好印象を持ったそうだ。というのも、同行では人的なリソースを割けないという事情があったからだ。こういった事情は他行でも同様だった。

「行内にはシステム統括部という部門がありますが、プロジェクト調整を中心に一人だけが担当し、プログラミング開発などの知見は、エムティーアイさんから全面的にサポートしていただきました。アプリのサービスと勘定系とのAPI連携についても、エムティーアイさん側でさまざまな接続試験を実施してくれました。また多くのスマートフォンでOSバージョンの検証テストも行ってもらいました」(坂上氏)。

今回のアプリは2021年2月にローンチされ、まだ間もないのだが、顧客からの反響もかなり大きく、手ごたえを感じたという。わずか2ヵ月足らずで、約1万4000ものダウンロードがあり、いまでも毎週1000ぐらいのハイペースでユーザーが増え続けている。みちのく銀行では100万口座を預かっているため、現時点で顧客の1%が利用している計算だ。

坂上氏は「この3月から通帳レスのキャンペーンを実施しており、その影響もあるかもしれませんが、5年間で10万ユーザーという当初の計画よりも、かなり早いペースで目標を達成できそうです」と喜びの声を上げる。

みちのく銀行では、今後も口座振替サービスなどの新機能を加えつつ、地元ユーザーに愛され、末永く利用してもらえる進化系アプリを目指していくという。そこでもエムティーアイのフットワークの軽さと、手厚い助けを借りながら、改善を繰り返していく意向だ。

※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2021年7月15日)

みちのく銀行 坂上様、棟方様
お忙しい中、取材にご協力頂き、ありがとうございました。

株式会社みちのく銀行
みちぎんアプリ: https://www.michinokubank.co.jp/tsukau/forward/app.html
取材日時:2021年4月
取材場所:株式会社みちのく銀行様 本社会議室