「記憶頼りの申請」をたった2カ月で解消、
アイデアとノウハウの自動化アプリ
※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2021年7月15日)
野村ホールディングス株式会社

野村ホールディングス株式会社

コーポレート・デザイン・パートナーズ株式会社 代表取締役 田中 秀和様
コーポレート・デザイン・パートナーズ株式会社 クライアント・ソリューション2部長 清田 亮平様

野村ホールディングス株式会社様(以下、野村ホールディングス)は、グローバル金融サービス・グループとして、世界30カ国・地域を超えるグローバル・ネットワークを有しておられます。営業、ホールセール、インベストメント・マネジメントという3つの部門が横断的に連携して、国内外のお客様に付加価値の高い商品・サービスを提供されています。野村ホールディングスのグループ企業であり、グループ各社の財務や経理を担うコーポレート・デザイン・パートナーズ様が中心となり、経費精算ソリューション「FEEDER」をご導入いただきました。

これまで経費精算は「ペーパーレスがなかなか進まない業務」と思われてきた。紙の領収書を扱う業務は申請者や管理者、経理担当者など全ての関係者にとって煩雑で負荷が高く、テレワーク普及を阻む要因の一つでもあった。

この課題解決に官民が取り組み、経費精算業務の電子化が進みつつある。電子帳簿保存法の改正によって、領収書をスキャンしたりスマートフォンで撮影したりといった方法でデータ化したものや法人カードの決済データを証憑(しょうひょう)として扱えるようになった。しかし、こうしたやり方だけでは対応できないケースも残っている。その一つがタクシーを利用した場合の経費申請だ。タクシーの領収書や決済データには時間や場所などの情報が記載されないことが多いため、申請者の記憶を頼りにした情報入力が必要になってしまう。

経費精算業務のデジタル化を進めた野村ホールディングスはこの課題に向き合い、システム化によって「記憶より記録」の電子精算を実現したという。その方法とは。

経費精算のデジタル化の動きに唯一取り残されていた「タクシー利用料金」

野村ホールディングスは2014年から、経費経理業務のデジタル化に積極的に取り組んできた。従業員が公共交通機関を使う際は「Suica」や「PASMO」など交通系ICカードの利用を徹底し、カードを機器で読み取って正確な申請を可能にした。出張費や単身赴任費の経費申請においては法人カードの利用を徹底し、カード会社から取得した利用データをコンカーの経費精算システム「Concur Expense」と連携させて経費申請の効率化と正確性を両立させていた。

同社のグループ企業であり、グループ各社の財務や経理を担うコーポレート・デザイン・パートナーズの田中秀和氏(代表取締役)は、こうした一連の取り組みのコンセプトについて次のように説明する。

「『記憶ベースから記録ベースへ』というスローガンを掲げ、証憑類の電子化によって経費精算業務の効率化を図ってきました。さらに、効率だけを追い求めてコンプライアンスやガバナンスがおろそかにならないよう『効率化とガバナンス・コンプライアンスの両立』という目標も立て、会社と従業員をしっかり守れるような仕組みを構築してきました」(田中氏)

ICカードや法人カードのデータ連携は、経費経理業務の手間を省いて業務効率化を図ると同時に、不正使用を疑われるような「意図せぬミス」の発生を防ぐ仕組みだ。ICカードや法人カードの利用によってこれらの効果は目に見えて表れたが、唯一「タクシー料金の精算」には対応しきれていなかった。

「一般的にタクシーの領収書には時間や場所の情報が記載されていないため、それのみでは経費として適正かを判定する情報が十分とは言えません。また、法人カードの支払いデータはConcur Expenseに連携されると言っても時系列通りに取得できるとは限らず、そのデータが『いつ・どこで利用した分か』が一目で分からないため、データと記憶を突き合わせる必要があり、記憶ベースの申請になってしまうという課題が残っていました」(田中氏)

スマホのGPSと時刻情報をConcur Expenseと連携させる

「タクシーの正確な場所を得るために、スマホのGPSデータを活用するアイデアはありました。しかし当社はアプリ開発の経験がなかったため、具体的な実装のイメージをつかめずにいました」と語るのは、FEEDER活用プロジェクトを率いたコーポレート・デザイン・パートナーズの清田亮平氏(クライアント・ソリューション2部長)だ。

同社はタクシー料金の精算以外の用途も含め、スマホアプリとConcur Expenseの連携による業務効率化の可能性を探っていた。そこで出会ったのが、エムティーアイが開発し、提供する領収書読み取りアプリ「FEEDER」だった。

FEEDERはスマホで撮影した領収書の画像をAIで読み取り、そのデータをConcur Expenseと連携するものだ。Concur Expense連携サービスの中でも知名度が高く、2018年にはコンカーの主催する「Concur Japan Partner Award 2018」において「イノベーションパートナーアワード」を受賞している。

2014年からConcur Expenseを利用し、さまざまな外部機能との連携を進めてきた同社にとって、FEEDERは「もともと気になる存在だった」という。

「Concur Expenseとデータ連携できるOCR製品として、FEEDERには以前から着目していました。2017年に開発元のエムティーアイさんとお話しする機会があり、そこでタクシー料金精算に関する悩みを話したところ具体的にご提案を頂き、開発を始めることになりました」(清田氏)

タクシー料金精算における最大の課題は、法人カードの決済データが「いつ、どこで利用したものか分からない」点にある。しかしスマホのGPSデータと時刻情報をアプリで取得してConcur Expenseと連携できれば、法人カードの決済データと位置情報、時刻情報がひも付き、いつどこでタクシーを利用したデータかが容易に判別できるようになるかもしれない。OCR技術とConcur Expenseとの連携にたけたエムティーアイと組むことで、清田氏は「アイデアに現実味が出てきた」と当時を振り返る。

FEEDERのシステム概要

1週間でモックアップ、2カ月でプロトタイプ完成

初めてのヒアリングから1週間後にはアプリの画面モックアップが完成し、その後2カ月足らずでアプリのプロトタイプが完成した。デモを初めて見たときを振り返って、田中氏は「私たちとしては『こんなことができたらいいな』という希望的観測をお伝えしただけだったのに、本当にそれがこれだけ短期間のうちに実現できてしまうことに驚きました」と語る。

FEEDERを活用した精算アプリ

利用者は、タクシーを利用した後に法人カードで料金を支払い、そのタイミングでスマホアプリを立ち上げてタクシー利用料金を入力する。アプリは自動的にGPSの位置情報と時刻情報を取得し、Concur Expenseへと連携する。

法人カードの決済データがConcur Expenseに届くと、あらかじめアプリから送られてきた料金情報と位置情報、時刻情報が自動でひも付いて記録される。これによって「いつ、どこでタクシーを利用した際のデータなのか」を容易に割り出せるようになる。

清田氏は、本番運用に向けてアプリを作り込むに当たって、ユーザーの使い勝手に徹底的にこだわったという。

「アプリの操作が煩雑だと、現場には定着しません。そのため、なるべく少ない操作で利用できるようUI/UXを工夫しました。本番運用は2021年2月から営業部門に所属する8000人を対象に始めたのですが、導入当初の利用率は50%を達成できました。新たに導入するシステムの利用率としては、異例とも言える高い数値です」(清田氏)

経費精算を申請する従業員からの評価も高く、申請を承認する立場の管理職にもこの仕組みは大いに役立つものだという。

「『スマホのGPSと時刻情報』は客観的な裏付けがあるデータです。そのため従業員の記憶に頼った申請よりも情報の信ぴょう性が上がり、管理職は従来よりも安心して承認できるようになりました。システムが自動取得した客観的なデータで情報の信ぴょう性が保証されていれば、将来的にはAIを使った承認処理の自動化など、さらなる効率化に弾みが付きます」(田中氏)

位置・時刻データのさらなる活用の道を模索

コーポレート・デザイン・パートナーズは現在も、エムティーアイとともにこのタクシー料金精算の仕組みのブラッシュアップを続けている(2021年6月時点)。2021年2月の本番利用開始以来、既に細かな使い勝手の点で改修を施した他、利用状況をモニタリングしながらさらなる利用率の向上に向けて施策を練っている。

その中で、スマホアプリから取得した情報の分析によって新たな気づきと構想が生まれつつある。

「正確な位置情報や時刻情報を、当初は想定していなかった用途に使えるケースが出てきました。例えばタクシーの利用時間があまりに不自然な場合、申請者に『本当にこんな時間帯にタクシーを利用したのか?』と確認できるようになりました」(田中氏)

データ連携による経費申請の自動化や効率化とともに、ガバナンスやコンプライアンスも守りやすくなった。経費申請の自動化や効率化は、使い方を誤ると不正利用の温床にもなりかねない。しかし今回、コーポレート・デザイン・パートナーズとエムティーアイで開発した仕組みは、データ活用によって従業員の不正や“不正を疑われるようなミス”を予防し、ビジネスを効率化させながら企業と従業員を守れるものになった。

同社は今後、アプリが収集した位置情報をうまく活用し、経費精算以外の用途にも活用する方法を模索するという。

「今回開発した仕組みを応用して、例えば安否確認システムができるかもしれません。あるいは、いわゆる“カラ出張”を抑制する手段としても使えるかもしれません。いずれにせよ、APIを通じてGPSと時刻の情報を他のデータと掛け合わせることで、データの証憑としての信頼性が高まり、ビジネス全般におけるデータ活用の可能性が今後さらに広がるのではないかと期待しています」(田中氏)

※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2021年7月15日)

野村ホールディングス株式会社 田中様、清田様
お忙しい中、取材にご協力頂き、ありがとうございました。

野村ホールディングス株式会社 https://www.nomura.com/jp/
導入サービス:FEEDER
取材日時:2021年6月
取材場所:オンラインにて実施

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